10 君が愛に傷つかないために

 全ての愛は自己愛だ――そう言いつつ、パパは君やママに「愛してる」と毎日のように言っているよ。

 こんなにもあたたかい気持ちにさせてくれてありがとう、最高に素晴らしいあなたを心から大切に思っていますという敬意と感謝を込めた好意の最上級の表現として。

 これを聞いて君の口角が少しでもあがってくれたのなら光栄なことだけど、別に無視されたって構わない。

 だってこれは君という存在からいつもいただいているものに対して、歓喜の声をあげているだけのもの。さながら素晴らしいプレーを見せてくれたスポーツ選手に、「あなたは最高だ!」と言っているようなもので、恩に着せるものではないし、何か見返りを期待するようなものでもない。

 パパは無償の愛なんてこの世界には存在しないと思っているけど、もしもあるとしたら、こういうものなんじゃないかな。

 自己愛に塗れた自らの傲慢さや強欲さをしっかりと認識し、大切な人の、その存在に対して感謝をすること。

 何もなくとも、すでにその存在から沢山の得をもらっていると感じ取ることで、見返りを期待せずに思いやることが出来る。

 パパは君と一緒にお散歩をしているときに暴走した車が向かって来たとしたら、身体がちゃんと反応するのであれば、身を挺して君を守りたいと強く思っている。

 これを書いている今、君は一歳四か月。

 保育園の送り迎えをしているときとか、車の通りが多い道を歩いているときには、いつもそんな状況を頭の中に思い描いている。

 ちょっとカッコいいでしょ? だけどこれもパパの自己愛。君を失った惨めな自分に会うよりは、君を救った素敵な自分に会いたいというパパのワガママでしかない。

 だからもし、実際にそんなことが起きてパパが死んでしまったとしても、君に頼まれたことではないし、何の責任も感じなくていい。

 見返りを求めないんじゃない。

 既にもらっているんだ。

 ――どんなことでもこんな風に考えることが出来れば、人生は凄く楽になるよ。

 なんだって素敵な自分に会うために自らがやりたいからやっているんだと思って取り組めば、誰かに押し付けられてやらされていると思うよりも力が出るし、誰かに恩を着せたり見返りを求めることもなく、心が自由でいられる。

 だから君にも、大切な人に積極的に「愛してる」と言える人になってほしい。

 大切な人でいてくれてありがとう、好きにさせてくれてありがとうと、その存在への感謝を臆することなく口に出来る人になっちゃおう。

 損するわけじゃないんだから、その存在から既にお代はもらっているんだから、お礼を言うのは当然のこと――そんな風に思えれば、簡単なことだよね。

 相手が際限なく求め続けるような残念な人じゃなければ、お返しした得に対して、求めずともまた得が返ってくる。

 そんな思いやりのキャッチボールを続けることが出来れば、当然大切な人を傷つけてしまうことも、大切な人から傷つけられることも減り、大切な人との間により良いコミュニケーションを築くことが出来る。

 それに、「愛してる」って語感が凄くいいよね。

 柔らかく、あたたかく、とても心地が良い響きをしているので、言われた方は勿論のこと、言っている方も嬉しい気持ちになるのでガンガン使っていこう。

 愛はお金よりも命よりも尊いものじゃない。

 この言葉にまとわりついてる幻想は、大切な人を喜ばせるためにのみ機能すればいい。

 どうでもいい人たちには媚びへつらい大切な人たちには甘え、傷つけてしまう愚かで惨めな自分から離れて、限りあるときの中で出来る限り大切な人を敬っていける、素敵な自分に会っていこう。

 いつか必ず別れるときがくるのだから、そのときに後悔しないようにね。

 君が愛に傷つきませんように。

 愛してるよ。