05 愛と自己愛についての○×問題

 問題文を読み、これが他者のための愛であれば○を、自己愛であれば×を付け、その理由を述べなさい。

《恋人たちの愛情篇》

【問題】
 いつも他の誰かに取られてしまうんじゃないかと心配するほど大好きな彼女が、「人数合わせで呼ばれたから合コンに行く」と言い出したので、「こんなに愛しているのにどうしてわかってくれないんだ!」と叫んで殴った。

【答え】×
 愛は相手の事情などおかまいなしに勝手に自分の中だけに生じる、他者には見えないし伝わらないものなので、わかってもらえないのは当然のことである。
 それでも愛には「お金よりも命よりも尊いもの」という幻想があるため、なんとなくこのような言い方をして傷ついた振りをしてみれば、簡単に自らを被害者のポジションに持っていくことが出来てしまう。
 実際のところ、彼は『俺様に不愉快な思いをさせるな!』と彼女の言動によって自身がストレスを感じたことに対して怒っているのであり、これは彼女への愛ではなく、自分を守るための自己愛である。

【問題】
 少し遅刻したぐらいで不満そうな顔をする彼女に、「そんなことぐらいで怒るなよ」と、今後の二人のためを思って注意した。

【答え】×
 今後の二人のためを思うのであれば、そもそも遅刻をしない思いやりと、怒りを受け止める寛容さを自分自身が持つべきである。そのような考えなど全くなしに説かれる「今後の二人のため」とは、「今後の自分のため」でしかなく、自己愛である。

【問題】
「他の女の連絡先なんて必要? 私だけいればいいでしょう?」と言って、彼氏のスマホから自分以外の女のデータを削除させた。

【答え】×
 愛の幻想を悪用し、恋人は友人や知人よりも上位の存在であるから何をやってもいいとこのような暴挙におよぶ人がいるが、束縛は相手の都合や交友関係よりも自分の心の安寧を優先させる、自己愛である。
 あたかも堂々とした、自信に満ちた強い女といった口調で言い放ってはいるが、その心の奥底には『こんなにも価値の低い私は、他の女と比較されたら捨てられてしまう』という強い劣等感と恐怖心があるのである。

【問題】
「お互いに結婚も考えているわけだし、本気で心から愛し合いたいから、隠し事なんて抜きに全部喋れる関係になろう、本音で語り合おう」と恋人に告げた。

【答え】
『本気で心から愛し合いたいから』とかもっともらしいことを言っているが、自分が昨日見た猥褻な動画のことは決して喋らないのである。
 これも劣等感の強い人間がいつか見捨てられることを恐れて「僕に隠し事をしないでください」と相手にだけプライバシーの開示を要求している、自己愛である。

【問題】
 せっかく恋人になれたのだから、もっと自分のことを理解し、愛して欲しいと、自分の好きな映画やアニメ、漫画や小説などの作品を見るように強要した。

【答え】×
 共通の話題や言葉を沢山持っていることはコミュニケーションの幅を広げてくれるし、自分の知らないことや触れていなかったものを恋人を通して学んでいくことはまさに恋愛の醍醐味であるが、やはりこれも自己愛である。
 別にこのようなことをせずとも仲良く付き合っている恋人たちはいくらでもいるし、あたかも二人の関係性を向上させる課題のように言っているが、その実自分のコピーが欲しいだけである。
 このような要求が自分の一方的なワガママであると自覚しておかないと、薦めた作品をただ見てくれない、お気に入りの場所についてきてくれないというだけで『愛されていない!』と激怒したり、裏切られたような錯覚に陥ってしまうのである。

【問題】
彼女の愛を確かめたくて、「俺のことが本当に好きなら、いいだろう? ちゃんと外に出すから」と言ってコンドームをつけずにセックスをするよう要求した。

【答え】×
 危険な行為を受け入れてもらうことで愛情を感じたい、お前の愛を試しているという雰囲気で迫ってくるが、逆に彼女に対しては愛がないと言い切っているも同然の、完全なる自己愛から発せられる言葉である。その一瞬の快楽によって満たされるのは自身だけであり、それによって彼女が負うリスクを少しでも思えば、そもそも口に出せることではない。こんなくだらない自己愛のせいで年間17万件(2018年調べ)の堕胎が発生している。最後に外に出せばよいのではなく、行為の最中も確実に漏れているのである。戦略的に出来婚を狙っている場合を除き、このような要求をされたらそれは全く愛ではないと強く拒絶すべきである。

【問題】
「あなたと一緒にいられないなら、こんな世界なんていらない! あなたを殺して私も死ぬ!」と言って脅した。

【答え】×
 愛の幻想を悪用し、あたかも「この世界において最も尊い愛がこの手を離れてしまうのであれば狂気に走ってもいい」といった調子で脅迫してくるが、これも所詮自己愛である。別に捨てられても自分の中で思い続けていれば愛は消えないはずだが、愛を失うのが恐いのではなく、捨てられてしまった惨めな自分に会いたくないため、必死で抵抗しているのである。

【問題】
「恋人なんだからいつも私のことを思っているのが普通でしょ?」と言って、LINEの返信を直ぐにしない彼を叱責した。

【答え】×
 相手に常に思われている、気に掛けられている特別な自分でありたいという欲求があるのだが、ストレートにそうお願いしても受け入れてもらえそうにないので、『恋人なら当然のことだ』とあたかも一般常識のような言い方をしてそれを実現しようとしている。言うまでもなくただのワガママであり、自己愛である。

【問題】
 二人の愛は永遠だから、誰かに引き裂かれるぐらいなら――と、二人で心中しようと誓った。

【答え】×
 まさに愛は命よりも尊いという幻想に飲まれた考え方である。
「真実の愛」のようで美しい、カッコいいと二人で盛り上がってしまったのだろうが、現実にこれが事件化すると大抵はどちらか一方が『恐くて出来なかった』と言って生き残るのである。
 そもそも心中とは、根本には自らの死への欲求が先にあり、だけど一人で死ぬのが恐いから大切な人に一緒についてきてもらおうとするものであり、大切な人の未来よりも自らの恐怖心を優先させる自己愛極まりない行動である。

《夫婦の愛情篇》

【問題】
 夫婦なんだから当然だろうと、気乗りしない妻にセックスを強要した。

【答え】×
 夫婦間であったとしても、気乗りしない相手にセックスを強要することはレイプである。『夫婦だから』と言ってさも常識のような体で迫って来るが、相手への思いやりなどなく、ただ己の性欲のはけ口を求めているだけの自己愛である。

【問題】
「母親なんだから、お前が面倒を見てあげた方が子供も喜ぶよ」と言って、出来る限り子供の世話を妻に任せるようにした。

【答え】×
『母親は無償の愛をくれるもの』、『母親は子供が大好きで当然なもの』という幻想を悪用した典型的なパターンである。
妻に子供の世話を押し付けて守りたいのは自分の時間であり、『お前が面倒をみてあげた方がいい』とあたかも子供に配慮しているフリをしながら、その実、自らが妻と子に甘えているのである。当然、これも自己愛である。

《親子の愛情篇》

【問題】
 こんなに愛情を掛けて育てているのに、どうして言うことを聞いてくれないんだと子供を叱った。

【答え】×
 愛は見えないし伝わらないので、伝わらなくて当然である。それなのに勝手に気持ちを捧げた気になって被害者意識を募らせて怒っているのは、ただ自らの思い通りに子供が動いてくれないからであり、自己愛である。

【問題】
 愛する我が子が困らないように、なんでも先回りしてやってあげた。

【答え】×
 過保護は虐待である。子供が困っている姿を、失敗する姿を見たくないという自己愛を優先させた結果、何も出来ない人間に成長させてしまう。自己愛と闘い、辛くとも自主性を育むべく見守るのも親の務めだ。

【問題】
 愛する我が子が甘えん坊にならないよう、泣いていたり、何か文句を言ってきたりしていても無視をした。

【答え】×
 ネグレクトは虐待である。『甘えん坊にならないように』と言いながら、その実、子供に甘えて親の責務から逃げているのであり、子供に向き合うことよりも自らの時間を優先させている、自己愛である。

【問題】
 自分自身が親の愛情を受けて育っていないのだから、子供との接し方が分からない。今日も子供に冷たく当たってしまい、自己嫌悪に駆られた。

【答え】×
 親の愛情を受けて育っていないことをいいことに、子供に対していい加減な態度を取る自分を野放しにしている人が多くいるが、親の愛情を受けて育っていない分だけ子供にたっぷりと愛情を捧げたいと思う人たちも沢山いるので、前者の理屈は通らない。ただ自己愛を優先させて、自分が楽な道をいこうとしているだけである。
 本人も内心では分かっているので、それが心の奥底で罪悪感を、自己嫌悪を生み出し、ストレスとなってさらに子供に冷たく当たるようになる。
『子供との接し方がわからない』などと悩んでいるふりをしながら、実際はただ怠惰なだけであり、ネットや本でコミュニケーションの取り方を調べればいいのに、何も学ぼうとしないのである。

【問題】
 愛する我が子が立派な学校へ行けるよう、漫画やゲームなどは全て破壊し、売り払った。

【答え】×
 自分がされたら発狂するような、他人にすれば事件として処理されるような行為を子供に対して平気で行う人がいる。
 子供が自分の言うことを聞かず、他のことに夢中になっているその姿に対して激しい憎悪、嫉妬心を抱いて凶行に及ぶ。
 お前の世界で一番偉いのは、大切なのは自分なのだと主張している、自己愛の現れである。

【問題】
 悪さばかりをする本当にどうしようもない子供だけど、親だから見捨てることはできない。

【答え】×
「親だから子供の面倒を見なければならない」という幻想に惑わされて思考停止をしてしまう人がいるが、子供のことを思いやる気持ちなどなく、ただ一般常識や世間体から外れない人間でありたいという自己愛のために見捨てないのであれば、それは子供自身にとっても自尊心を傷つけられ、親に迷惑を掛けているという罪悪感を、親に大切に思われていないという屈辱感を与えられ続ける地獄である。

【問題】
「あんなに愛情を掛けて育てたのだから仕送りぐらいしろ」と言って子供にお金をせびった。

【答え】×
 頼まれてもいないのに世話を焼いてその見返りを求めるのであれば、悪質な押し売りと同じである。見返りを求めてしたことであればそれは自分のための投資であり、当然、自己愛である。

【問題】
 自分は本来親からもらえるはずの愛情をもらえずに育ったのだから、引きこもっていても許される。親が産まなければ自分はこんな人生を歩まなくてすんだのだから全ては親の責任であり、いくつになっても親が子供の面倒を見るのは当然のことだ。

【答え】×
 2019年6月、このような主張をSNS上で繰り返していた引きこもりの中年男性が父親から殺されるという事件が起きた。
 トイレで産み落とし、そのまま放置して殺してしまう母親もいれば、暴力をふるい続けて殺してしまう父親もいるので、親が当然子供に与えるべき愛情など存在しない。それなのに、「親は無償の愛をくれる存在」という幻想を悪用し、それを貰えなかった自分は同情され、保護されるべき被害者なのだと主張するのは、そう叫ぶことで安心安全の引きこもり生活を手放したくないからであり、自己愛である。

【問題】
 親なんだから子供がやりたいと思ったことを応援してくれないのはおかしいと反発した。

【答え】×
 前述の通りいろんな親がいるので、「応援してくれて当然」などということはない。これも親は無償の愛をくれる存在だという幻想を悪用した、自己愛によって引き起こされる勘違いである。

【問題】
 一人娘が結婚相手として連れてきたのは三十代にして貯金もない実家暮らしのフリーター。「そんなヤツと一緒になって幸せになれるわけがない!」父として、愛する娘の幸せを思って断固反対した。

【答え】×
 医者や弁護士と結婚した女性が皆幸せになっているとは限らず、娘が幸せになれないというのはこの父親の妄想である。
 また、愛する娘が自分から見れば頼りないこの男に傷つけられる姿を見たくないと思うのは、この父親自身が辛そうな娘を見てストレスを感じたくないということであり、これは娘の心よりも自身の心の安寧を優先した自己愛である。

【問題】
 娘に全く家事や料理を教えてこなかったので、その旦那さんや子供にも迷惑を掛けないよう娘家族の住む家に毎日通って家事全般を行った。どうせ暇しているだけなので時間はあるし、娘はとても助かるといっているが、娘の旦那さんは「お義母さんが毎日家にいると落ち着かない」と嫌がっているそうだ。ただ手助けをしたいだけなのに、娘の幸せを思うことの何がいけないのだろうか。

【答え】×
 娘の幸せを本当に考えるのであれば、娘の家庭が円満に行くように静かに身を引く方が得策のように思えるが、自身の寂しさや孤独を癒し、達成感を得ることに夢中になっているため、それに思い至らないのである。娘を自立させないことで娘から必要とされる自分であり続けようとするのは善意ではなく、自己愛である。

《芸能人や有名人に対して》

【問題】
 あのアイドルとは毎回ライブで目が合っているし名前も覚えてもらった。彼女も絶対にこちらを意識しているのだから、将来絶対に結婚するのだから、実家を突き止めて愛の手紙を送った。

【答え】×
 こんなことを自分が全く興味のない、赤の他人からされたら恐怖でしかないが、それが見えずにやってしまうのは自己愛だからである。そのアイドルの気持ちなどどうでもよく、自分を楽しませる刺激を、興奮をもらいたくてたまらないのである。

【問題】
 あの芸能人のことをずっと応援していて心から愛していたのに、突然結婚なんてしやがったからグッズを破壊し、燃やした写真をSNSへ投稿し、Wikipediaを荒らした。

【答え】×
「好きだ!」、「可愛い!」、「カッコイイ!」などと思い、叫び、興奮していたのは自分の心が動くことが楽しいからであり、それは好きな芸能人のための思いではなく、自己愛だ。
 だからその芸能人が結婚をし、もはや都合のいい妄想の道具になってくれないと分かったら、「裏切られた!」、「許せない!」などと憤って日常生活でこさえたストレスのはけ口に使ったり、狂気じみた行動をSNSに投稿して注目を浴びて承認欲求を満たすために使ったりと、絞りカスまで使い尽くそうとするのである。