12 不思議な親友とスピリチュアルよもや話(後編)

 いざ現場に着くと、あらゆる企業が巨大でユニークな慰霊碑、供養塔を出しているのを見て、圧倒された。
 ちゃんとしている会社は、ちゃんとこういうこともしているんだなと、凄く考えさせられた。
 パパが幼い頃は宜保愛子さんや織田無道さんといった、面白おかしくて胡散臭い有名霊能者がいっぱいテレビに出ていた。
 そんなブームがオウム真理教事件と共に消滅し、インターネットが普及すると、強引な勧誘をしたり高額な布施を要求する悪質な新興宗教団体や霊感商法の実態も広く世間に知れ渡ることになり、神とか霊とか死後の世界とか、そういうことを真剣に語る人は詐欺師のように思われるようになってしまった。
 だけどみんな親しい人が亡くなるとお葬式をあげるし、なんとなく霊の存在を信じたり感じたりしている。
 海外の文化が多く流れ込んできて、神も仏もないような考え方がスタンダードになってきているけど、万葉集にも「言霊の国」とあるように、日本という国は神や仏、そして霊とは切っても切れない土壌にあり、それを畏怖し、敬い、共存してきたことが日本人のDNAには刷り込まれている。
 だからこれだけAIが台頭してきている時代にあってもみんな神社やお寺を取り壊そうとしないし、きっと本当に目には見えないものの存在が、この国にはあるんだろう。
 ――Kとそんなことを語り合っていた高野山初日の夜。
 突然、Kがポツリと言った。
「実は俺も少し見えるときがあるんだ」
 聞けばKにも不思議な力があって、Sさんのように他人の未来や亡くなった人の姿などは見れないけど、神社やお寺にいる精霊的なものや、目には見えない悪いものの気配や声を見たり聞いたりすることはできるらしい。
 そういうキャラでいきたいのかと初めはパパも信じられなかったけど、どうやらそれは本当のことだったようだ。
 後日、SさんとKとパパの三人で有名な神社を参拝しに行ったときのこと。
 突然Kがご神木の前で立ち止まり、ボーッと立ち尽くしていた。
「あれ、Kがついてきませんね」とSさんに言うと、「彼は今、木とお話しをされていますから、そっとしておいてあげましょう」と言われた。
 あとになってKにそのことを話すと、「凄いな、やっぱりSさんには見えるんだ。そうなんだよ、『どこから来たの?』って話しかけられていたんだ」と言っていた。
 不思議な話は尽きない。
 今でも二人のその不思議な力を楽しませてもらっているけど、急激にスピリチュアルな世界がパパのもとに押し寄せてきたのは、まさにこの時期からだったと思う。
 丁度この頃、飯野賢治さんのトークショーに参加すると、彼自身も不思議な力を幼い頃に持っていたというエピソードを語っていた。
 メモを取っていないので多少違うかもしれないけど、それはこんな話だった。
 少年時代の飯野さんは、このあと誰に会うか、何が起こるかなど、頭に思い浮かんだことが現実に起こってしまうという悩みを抱えていた。
 まるで自分が未来を作っているかのような気持ち悪さを感じていた飯野さんは、そんなことはなく、これが思い込みだと自分に言い聞かせるために、もう絶対に起こらないことを考えようと思った。
 そこで飯野さんはデパートを歩いているときに、「目の前に裸の女の子が現れる!」と思った。
 すると、本当に目の前に裸の女の子が突如として現れてしまった。
 恐らくおもらしをして母親に着替えさせられていたであろう少女がトイレから飛び出して来たようで、直ぐに少女はその母親に抱きかかえられてトイレの方に消えて行ったそうだけど、それは相当にショックな体験だったと言っていた。
 飯野さんは他にも、お父様が亡くなられることを言い当てた人がいるとも言ってた。
 彼の全盛期、雑誌やラジオに沢山出演し、本を出版していた頃にはそういった話を一切していなかったのに、突然あの飯野さんの口からスピリチュアルな話題を聞けるようになるというのも、不思議な縁のように感じた。
 ――実はパパにもそういう体験がある。
 小学校に入る前か、入った直後ぐらいの頃。
 母親と一緒に駅のホームで電車を待っていると、線路の真下で何か工事のような作業をしている人たちの姿が見えた。
 そこだけ空間が切り取られたみたいにぽっかりと穴が広がっていて、なんで線路の真下に人がいるんだろう、電車が来たら危ないんじゃないだろうかとホームから身を乗り出してずっと見下ろしていたら、突然視界いっぱいに猛スピードで流れていく電車のボディが広がった。
 間一髪、首をはねられないですんだ。
 パパは線路の真下にいる人たちに気を取られ、電車がやってくる音が全く聞こえていなかった。
 通りすがりのサラリーマンがそれに気づき、寸前のところで襟首をつかんで後方に引っ張ってくれた。
 あんな真下から素手でレールを掴んで作業しているわけがないのに、はっきりと見えていたあの作業員たちはなんだったのか。

 また、パパは夜寝るときに行こうと思えばいつも同じ夢の世界に行ける時期があった。
 その夢の中で友達になった子がいて、毎晩寝たあとはそっちの世界で二人で遊んでいた。
 あるとき、その友達から「明日は僕の家のマンションの屋上に行こうよ」と言われたことがあり、日中に嬉々としてそれを母親に言うと、「あら恐いわね、突き落とされちゃうんじゃないの?」とブラックな冗談を言われて恐くなってしまった。
 もうその夢に行きたいと思うのはやめようと思ったのに、どういうわけか次に見た夢の中で、パパは彼と二人きりでエレベーターの中にいた。
 パパは即座にエレベーターの隅にしゃがみ込み、「屋上にいかない! もう遊ばない! 助けて!」とずっと叫びまくっていた。
 延々とエレベーターが上がり続ける中、ただ泣き叫び続けるという、恐ろしい夢。
 目が覚めたとき「助かった」と思ったし、母親が言ってくれた冗談も偶然のことではなかったように思った。
 そんな恐い体験が多いから見ないようにしていたのかもしれないけど、なにかこう、この時期に怒濤のように体験した不思議な出来事の数々は、再びあっちの世界から「こっちを見ろ」と繰り返し言われているようにも感じられた。
 それまでは何もない世界だったのに、この頃を境に変なことになってきた。