11 不思議な親友とスピリチュアルよもや話(前編)

 話は少し遡り、新しい会社に入って直ぐの頃。
 社内でKという友人ができた。
 彼とは所属する部署が違うので一緒に働くことはなかったけど、同じフロアに同世代の男は二人しかいなかったので、どちらからともなく声を掛け合うようになり、一緒にランチに行くようになった。
 Kは細身のイケメンなのにオカルト方面に造詣が深く、新興宗教や未解決事件にも精通していた。
 そんなところが、たまらなく面白かった。
 UFOやUMAの魅力を熱く語り合い、ランチの時間だけじゃおさまらないほど会話が盛り上がると、「延長戦」と称して仕事終わりに会社の近くで飲んで帰った。
 誰にも言っていなかったことだけど、彼なら信用できると思ったパパは、初めて他人にSさんの存在を打ち明けた。
「本物の占い師を見つけたんだ」と切り出すと、案の定それはどんな人物なのか、その人には何が見えているのかと、激しく食いついてきた。
 Sさんがいかに凄いかを語り合う仲間が欲しくて「会ってみないか?」と言ったら、「遠慮しとく」と断られた。
「俺はそういうの、全く信じていないから。ああいうのは嘘だから面白い。お前も気を付けないといつか痛い目にあうぞ」
 楽しむけど信用はしない、そんな猜疑心が強いところもいいなと思った。

 彼は地方出身者で大学生の頃から東京に出てきていたので、一人暮らしも長く、住むところや引っ越し方法、家電の選び方にも豊富な知識を持っていた。
 パパが一人暮らしの準備をしていた半年の間は、冷蔵庫の選び方から盛り塩の作法まで、変なアドバイスを沢山くれた。
 いざ一人暮らしが始まると、Kは頻繁にパパの部屋へ遊びに来るようになった。
 部屋を暗くし、二人で選んだ大きめのソファーで映画を見るのに一時期ハマった。
 ポップコーンとお酒を買い、何を見ようかと相談して、感想を言い合う。
 センスのいいKとだから楽しめる、特別な時間だった。
 それから間もなく、Kはその彼女であるMちゃんも連れて遊びに来るようになった。
 みんなでゲームをしたりして、大学生の頃のようにはしゃいだ。
 ママに振られたときにも、慰めに来てくれた。
 前の会社でも良い人たちに恵まれたし、夜遊びを教えてくれた先輩など仲良くしてくれる人もいたけど、こんな感覚で接することができる会社の人はKが初めてだった。
 社会人になると学生時代のような友人はできないという話を聞いたことがあって、確かにその通りだなと思っていたけど、彼だけは違った。
 28歳になってからこんな友人にも巡り会えるなんて、本当に人生は分からないものだと強く感じる出会いだった。

 ――翌年、一人暮らしにも慣れ、ママにも振られたあとのこと。
 日曜の朝にKから電話があり、Mちゃんが亡くなったと聞かされた。
 自殺だった。
 夏には一緒に花火をしたり、夏祭りに行ったりもしていたのに。
 もともとMちゃんは心の少し弱い子で、精神的な病を抱えていた。
 彼女自身の家族間で大きなトラブルがあったことがきっかけだったようだけど、Kは自分にもっとできたことがあったんじゃないのかと、とても責任を感じていた。
 日増しに追い込まれていくKの姿を見て、パパはまた「Sさんに会ってみないか」と誘った。
 散々話しも聞いたし、気晴らしにも連れ出したけど、ずっと辛そうだったから。
 断られることは覚悟のうえで、Kのために自分ができる精一杯のことをしようと思ったら、もうSさんに繋げてあげることしか思い浮かばなかったから。
「ありがとう、じゃあ予約を頼むわ」
 パパの申し出を、Kは意外にもすんなりと受け入れた。
 あとで聞くと、K自身はパパの言っていた「本物の占い師がいる」なんて言葉は信用していなかったけど、考えが堂々巡りをしておかしくなりそうだったし、ずっと励ましてくれていたパパの申し出を断れなかったと言っていた。
 とにかく事情を説明してSさんに予約を入れると、キャンセルが出たからと言って数日後に時間を取ってくれた。

 ――そうして巡り合ったKとSさん。
 セッション終了後、パパの部屋へ報告しに現われたKの顔には少し元気が戻っていた。
「あの人はヤバい、本物だね」
 Kは苦笑いしながらそう言った。
 聞けば、Sさんは亡くなったMちゃんが今この場に来ていると言い、KとMちゃんの二人しか知らない思い出話を懐かしむように話してくれたそうだ。
 Mちゃんが精神的な病を抱えていたことや摂食障害で苦しんでいたこと、家庭環境が複雑だったことなどを言い当て、今彼女は辛かった身体から解放されてリラックスして笑っているということ、Kと最後に沢山の楽しい時間を過ごせて嬉しかったと、とても感謝していると伝えてくれた。
 それだけでも凄いのに、話はそれだけで終わらない。
 Kはおばあちゃん子で、幼い頃におばあちゃんを亡くしてからも、ずっとおばあちゃんに会いたいと思っていたらしい。
 そのおばあちゃんの姿も見えると言い出したSさんは、「おばあちゃんもいつもKさんのことを見守ってくれていますよ、『大丈夫だ』って言っていますよ」と話してくれたそうだ。
 そのときSさんが言った『大丈夫だ』というフレーズのイントネーションが、まさに地方の高齢者独特の、そのおばあちゃんがKに語りかけていた口調そのままだったようで、Kは一瞬、完全に頭が真っ白になったと言っていた。
 最後にSさんから「亡くなった方に祈りを捧げるなら高野山が一番いいですよ」と言われたとのことで、Kとパパは連休を使い、二泊三日で和歌山県にある高野山に行くことにした。