00 前書き

 君よ、愛しい君よ。
 君が生まれて一年が経った。
 ついに言葉を操れるようになってきた君は、その愛らしい小さな手で掴んだものをなんでもかんでも「どうじょ」といいながら僕に差し出してくれる。
 ああ、なんと素晴らしい、利他心に溢れた徳の高い子なのだと驚嘆する。
 親バカと呼ばれようが、バカ親と呼ばれようが構わない。
 今しか味わえない一瞬の光を、胸いっぱいに楽しませてもらっている。
 君の存在が、とても嬉しい。
 やがて思春期を迎えれば、本能的にパパのニオイがダメになったり、存在に嫌悪するような気持ちになってしまうのかもしれない。
 それでも今この瞬間、僕らは見つめ合い、笑い合い、最高に愛し合っていると感じる。
 ――だけど、このまばゆい輝きを浴びれば浴びるほど、パパは伸びていく影に不安を感じる。
 人生何が起きるか分からないからね。
 この世界には毎日悲しいニュースがあって、避けられないような理不尽もたくさんある。
 明日事故に遭うかもしれないし、天災に見舞われるかもしれない。
 君がこれを読んでいるとき、パパはもう死んでいるのかもしれない。
 今、君が転びそうになるのを手を伸ばして受け止めているように、将来にもパパが君の支えになることが少しはできたらと思うんだけど、それは叶わぬ夢なのかもしれない。
 そんなときに備えて、この文章群は君がちょっと大人になって日々に少し疲れたときに、パパと一緒にお散歩をしながら話しているような、外食しながら話しているような光景を思い浮かべながら書きました。
 パパ、そういうことがしたいの。
 変なアドバイスとかお説教じゃなくて、君の話にじっくりと耳を傾けたあとで、ちょっとパパが体験してきたワクワクするような話がしたいの。
 だから将来、君がちょっと疲れたとき、パパがそこにいなかったから軽い気持ちでこの文章群を読んでみて欲しい。
 きっと、ちょっと気持ちが楽になるから。
 絶望が君に寄り付きませんように。
 心を叶えて生きていこう!

(訂正)

 この文章群は、もともとは前作を踏まえて『たとえ明日パパが死んだとしても、君に絶対に伝え遺しておきたい、君がちょっと疲れたときに読んで欲しいパパの面白体験168』というタイトルで、パパの愛娘である君や、ご縁あって今これに目を通してくださっている君が人生に疲れたとき、回復アイテムになるようなパパの面白い体験談を168話分収録することを目指して書いていました。
 だけど、書き進めてみれば、パパの人生が面白くなったのは28歳からで、書ける話もそれ以降の話しかなかったので、シンプルに『人生28歳から』というタイトルにしました。
 これは当然パパの個人的なタイミングであり、いつ人生が始まるかなんて人によって全然違う。
 将棋の藤井聡太さんは14歳でプロの棋士になったし、パパの敬愛する飯野賢治さんは19歳で会社の代表取締役社長になった。
 アンダーワールドのカールハイドは40歳を過ぎてから大爆発したし、2019年現在「世界最高齢のプログラマー」と呼ばれる若宮正子さんは80歳を過ぎた頃から世界中に注目されるようになった。
 ――回りくどい言い方を抜きにして言えば、パパがこの文章群を通して君に伝えたいのは、いつ人生がスタートするか分からないから、途中リタイアをしないでほしいということだ。
 今がどんなに辛く、苦しくとも、想像もつかないほど楽しい未来が待っているかもしれない。
 パパが実際にそうだった。
 悲観して、絶望して、目の前の全てが黒で塗りつぶされたように感じていたあの頃のパパに言ってやりたい。
 最高に楽しい未来が待っているのに、何を辛そうにしているんだと。
 これまでの苦しみが全部ひっくり返って、幸せに満たされることがある。
 逃げてでも這ってでも、なんとか未来に辿り着けば、世界が変わるときがやってくるかもしれない。
 そんなことを君に伝えられればと思います。
 絶望が君に寄りつきませんように。
 心を叶えて生きていこう!