00「前書き」

 君よ、愛しい君よ。
 君が生まれて半年が経った。
 まだ言葉を喋れない君は、感情をうなり声と全身の動きで表現してくれている。
「おはよう」と声をかけると「うー」。
「ただいま」と声をかけると「うー」。
 手足をばたつかせながら最高の笑顔をくれる。
 心ないお愛想や狡猾(こうかつ)な打算が1ミリも含まれない純粋な輝きを浴びると、胸のあたりにじんわりと暖かい感じが広がっていく。
「ありがとう」
「大好きだ」
「愛してる」
 心から言葉があふれてくる。
 君の存在が、とてもうれしい。
 だけど、分かってる。
 これが一瞬の光だということを。
 そして、いつかは君と離れるときがくるということを。
 人生何が起きるか分からないからね。
 この世界には毎日悲しいニュースがあって、避けられないような理不尽もたくさんある。
 明日交通事故に遭うかもしれないし、天災に見舞われるかもしれない。
 これを君が読んでいるとき、パパはもう死んでいるかもしれない。
 そんなことを考えていたら、パパがこの人生で学んだ大切なことを、君に書き遺しておきたいと思ったんだ。
 せっかく親子になれたのに、ただDNAを分けただけじゃ悲しいからね。
 ここには君の人生をきっと幸せにする、本当に価値のあることだけを書いたつもりだ。
 だけど、別にここに書いてあることを鵜呑(うの)みにしなくてもいいよ。
 これは君の自由を奪うためではなく、君の自由のために書いたのだからね。
 愛する君へ。
 パパがこの人生で学んできた本当に大切なことを、全部君にあげよう。