フリータイム ドリーマー

光ちゃんさん

保育園で親同士の懇親会が予定されていた。

普段は朝、夕の通勤時に光ちゃんを抱っこして保育園まで連れて行くのが僕の仕事だけど、懇親会のその日は夕方に彼女が光ちゃんを迎えに行ってそのまま懇親会に出席してくれると言っていた。

「仕事終わったら真っ直ぐに帰らないで羽を伸ばしてきていいよ」

彼女はそういってくれた。

もうさ、本当に女神。

赤ちゃんがいるから当然のことだけど、平日は仕事と光ちゃんのお世話で好きなことをやれる時間なんて全然ないし、休日も光ちゃんのお世話で好きなことをやれる時間なんて全然ない。

ましてや一人で好きに外出するなんてありえない話なので、なんとも嬉しい限り。

っていうか、どう考えたって彼女の方がそういう時間を喉から手が出るほど欲しいだろうに、こういうとき譲ってくれて本当にありがとう。

心からの感謝を胸に、早速夜遊び情報をネットで調べる。

目指すは風俗からのキャバクラ。

オーガズム直後の心地良さ、気だるさを味わいながら綺麗なチャンネーとハウスボトルだけで竜宮フィーリングとかそんなことには全く興味がない。

ただただ、一人カラオケに行きたい。

んで、帰りに立ち飲み屋でノイキャンイヤホンで音楽聴きつつ二杯ぐらい飲んでからラーメンを食べたい。

ああ、なんて素敵な時間なんだろう。

2時間3000円程度の魔法の時間。

最高の夜になる。

それから、懇親会の日を指折り待っていた。

久しぶりの一人カラオケ。

一体何を歌おう。

もう子供も出来たことだし、これからはやっぱりおっさんとして恥ずかしくないよう、年相応に、落ち着いた曲も覚えていきたい。

そんなわけで、コレサワの曲をガンガン習得していこうと思った。

「彼氏はいません今夜だけ」

「いたいいたい」

毎晩こっそり声に出して練習。

部屋から声が漏れないよう、ボソボソっと歌いながらほくそ笑む。

地下室で爆弾を作っているような感覚。

大爆発を起こすそのとき、俺の中の女子を思い切り解放できる!

ああ、どれだけ気持ち良いことだろうか。

彼女は懇親会、自分は渾身・快! なんてね!

慣れなかったオヤジギャグもすっかり板についた中年腹をさすりつつ一日千秋の思いで待ち詫びた日々。

ついに迎えた当日、光ちゃんが熱を出した。

彼女も体調を崩し、二人は病院へ。

うん、そうなんだ、このパターンなんだよね。

期待していた、楽しみにしていたときに限ってこれがある。

赤ちゃんあるあるだよね。

風邪にいいものを買って真っすぐに帰る僕。

ワクワクできた分だけ幸せだった。

そう、幸せだったろう?