彼女の入院中の霊体験

子供

彼女が入っていたのは五人部屋。

同室はもう一人、カーテンで仕切られた隣のベッドにいる奇抜なネイルとだるそうな口調が特徴的なギャルっぽいヤンママだけだった。

入院二日目の夜、午前二時すぎ。

比較的体調は改善しつつあったものの、不規則な時間に思い切り寝てしまったことや(普段とてもいいベッドを使っているから)慣れない固いベッドのせいで彼女は夜中になってもなかなか寝付くことが出来なかった。

隣のベッドにいるヤンママは朝から晩までスマホをいじっており、消灯時間を過ぎると薄いカーテンの向こうにスマホの光がチカチカしていたものだったが、流石に夜中の二時にもなるとその光もなくなり静かな寝息を立てていた。

そんな真夜中。

聞こえてきた。

遠くで子供の走り回る足音と、無邪気な声。

そんな時間じゃないはずだと思ってスマホを再び確認すると、やはり時刻は午前二時すぎ。

明らかにおかしい。

聞こえなかったことにしてやり過ごそう、寝たフリをしなきゃと焦った。

だけど、次第に声は近づいてくる。

恐いなと思っていたら、突然隣のヤンママが怒鳴った。

「だから片付けておきなさいって言ったでしょ!」

その大きな声に驚いて、彼女自身も声をあげそうになった。

ドキンと跳ね上がった心臓を落ち着かせているうちに、気付けば子供の足音も声も消えていた。

――この不思議な一件について、彼女の見解。

彼女たちのいる部屋に子供のオバケがやってきたけど、ヤンママにちょっかいをかけたら夢の中にいるヤンママに自分の子供と勘違いされて怒られてしまった → 傷ついた子供のオバケはしゅんとして帰っていった → 終わり。

ってことなんじゃないかなと。

あんなにノリノリだったのに、可哀想。

「ああいう強い人ははねのけちゃうんだよね、凄いよね」と言っていた。

彼女自身ちょっとそういったセンスを持っている人なので、こういうことがたまに起きる。

やっぱり流産や中絶で沢山の子供が亡くなっていたり、人生で一世一代の強い感情が常に渦巻いているような場所だからね、産婦人科って。

死霊も生き霊もフェスしてるぐらいのエネルギーが集まってるんだろうなと思った。

恐い恐い。