キチガイさんに教わることもある。彼女が金縛りにあう。

エスパーマミ

今朝、凄く身体がダルかった。

仕事行くのがツラくて、遅刻ギリギリで家を出た。

そんな朝、会社の最寄り駅で太った眼鏡の男がのしのしと歩きながら「ふざげんじゃねぇぞオラァッ!!」とか叫んでた。

特定の誰かにではなく、誰もいない正面に向けて怒鳴ってる。

寂しくて注目を集めたいという無意識の暴発か、それとも見えない敵と闘っているのか。

どちらにせよ威圧的で恐い雰囲気で、スゲー迷惑だなぁと思った。

特に、一瞬のことだったけどその顔が胸に残った。

本気でキレた顔。目をひん剥いて、口を歪めて。

会社まで歩く道の間、その顔を思い浮かべながら思った。

そんなに一生懸命にならなくても……

誰にキレていようが、何と闘っていようが、結局は自分が害されたとか、自分が不愉快だとか、ナルチシズムでキレてんだよね。

別にいいじゃん。人の生き死にに関わることじゃないし。

自分を尊重しすぎだよ。

いいじゃん、何もかもが通りすぎて何も残らないのが人生じゃん。

それをあんなマジな顔にならなくてもね……そんなことを考えながら、僕もそうだなって思った。

自分を尊重しすぎだ。

自分だけのことなのに、大袈裟なんだ。

身体がダルいことも、たいした問題じゃない。

そんなに一生懸命にならなくてもいいじゃん。

そう思えたら、ちょっとだけ楽になった。

今日は派遣会社の営業の人が来るといった時間に来なかった。

昨日の夜に「○時に明日うかがいます」というメールが会社のPCに一方的に送られてきていて、今朝確認。

こういう仕事の仕方はいかんなぁと思ったら、○時に来ない。

連絡もない。

就業時間が終わったあとに電話したら切られた。

もういいやと思ってオフィスを出ると、電話が掛かってきた。

言い訳は「打ち合わせ長引いちゃって~」だった。

キレるようなことじゃない。

一生懸命にならなくていい。

キチガイさんに教わることもあるんだなと学んだ一日であった。

嘘……

ん? 誰?

まぁ、そんなことよりも彼女だ。

ココだけは一生懸命にならないとダメなところ。

彼女の体調不良は本日も継続中で、今日も早退していた。

職場にも「今週は半休させてもらうことが多いと思います、お願いします」と頭を下げてきたとのこと。

正社員の頃は毎日終電帰りでバリバリ働いていた人だから、よっぽど具合が悪いんだろうなって本当に見ていてツラい。

真面目な人だから、半休するなら休憩を取らずに働いちゃうんだろう。

彼女にこそ、一生懸命にならないで欲しいや。

いっそ――

ん?

ひと思いにいっそ――

やだな、今日はどこからか変な声が聞こえてきてなんか恐い。

……あ、そうだ、「恐い」で思い出した!

昨晩、僕のベッドを奪い続けている彼女がとうとう僕の部屋の洗礼を浴びた。

恐い夢を見て、金縛りにあったそうな。

僕の部屋はヤバい。

去年の心がクサクサしている頃、僕は二週間ほど一日も欠かさずに金縛りにあっていた。

んで、必ず何者かに首を絞められていた。

それでも彼女は僕の部屋で今日も眠る。